坂口恭平は、作家であり綺麗な絵を描く画家であり、時おり歌なども歌う実に多彩なアーティスト。
ツイッターなどのSNSも積極的にやっていて、もうだいぶ昔から、自分の携帯番号を公開して「いのっちの電話」という活動を行っています。これは、自殺したくなった人が坂口恭平と話をすることができる電話。多い時には100人もの人と話をしたといいます。
自身も躁鬱病を患う著者による、気分の波を乗り越えてゆく方法を伝授する一冊です。
あらすじ、内容について
誰にも言えない悩みだと思っていたのに、そうじゃなかった?!
31歳で躁鬱病と診断され、気分の浮き沈みの激しさに苦しんでいた僕がみつけた、ラクに愉快に生きる技術。みんな、人からどう見られるかだけを悩んでいる。鬱のどうにもならない落ちこみ、自己否定をどう扱うか。はたまた躁の周囲を疲れさせてしまうほどに過剰なエネルギーをどうするか。
自らの経験をもとに、ユーモアあふれる対処法を徹底講義!
躁鬱大学: 気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません
目次の各章が大学の講義風の体裁でもって、著者が読者に語りかけるような軽やかな文章で綴られていきます。
坂口恭平が感銘をうけたカンダバシという人の言葉を引用しつつ、自身の具体的なエピソードも盛り込まれ、もちろん時に重たい内容なんだけど、全体的にはどこかユニーク。楽しい坂口先生の授業をまとめたような内容になっています。
躁鬱大学の感想、所感
坂口恭平本人も躁鬱病で、本書では躁鬱人、非躁鬱人という区別をしています。
便宜上、このように区別はされていますが、どんな人にも気分の波というものが存在はしていると思うし、だれにでも前向きな日や考え込んでしまう日があるでしょう。
その波の振幅が大きすぎたり、あるいは全体に低いところにあると、日常生活になんらかの影響がでてしまったり病気と診断されたり。その表出の仕方だって人それぞれに違いありません。
この本に照らすと、自分自身はなにか支障が出るほど気分に振りまわされてはいないし、鬱の辛さというものの本質的なところは理解できていないのかもしれません。
そんな所謂、非躁鬱人だって当たり前ですが人間関係の悩みはあるし、少なからず生きづらさを抱えているものです。そういう意味で、躁鬱人にはもちろん、非躁鬱人にも有益なヒントがつまった一冊です。
ただ、著者の仕事論については、ちょっとずるいなと思ってしまう。頭がとてもいいし、音楽や絵の才能もある。そんな人は滅多にないでしょう。
坂口恭平のツイッターでは毎日のように素敵な絵を発表しています。パステル画をはじめて1年くらいでこのクオリティです。
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