横浜駅の有隣堂で平積みされているのを、なんだか気になってしまい購入。目的ではない本をふらっと手に取ってみるのも、本屋を眺める楽しみですね。
あらすじ、内容について
この街は、ヤバいーー。経済格差、ヘイトクライム、高齢化、薬物汚染、そして分断。ここは日本の縮図だ! 気鋭のライターが切りこむ先鋭的ドキュメンタリー、待望の文庫化
Amazon 商品の説明より
「ルポ 川崎」というタイトルの通り、主に川崎の裏社会や、不良少年たちに焦点を当てたドキュメンタリーとなっています。
川崎という街にそういう側面があることは事実なのでしょうが、このタイトルはやや誤解を与えかねないと思わないでもありません、笑。
「ルポ 川崎」の感想、所感
数年間は川崎市民だったこともあるし、今もおとなりの横浜市民。川崎は、なじみのない場所ではありません。
でも、この本に書かれているような事柄とは、つくづく縁遠い人生を送ってきたし、多くのいわゆる「普通」の人も同じではないでしょうか。
中心的に描かれる不良の世界、喧嘩や薬。ヒップホップやストリートの文化もよく知らなければ、川崎の象徴ともいえるディープな飲み屋街、ギャンブル場にも行きません。
ところが、この本を読んでいていると、知っている地名がどんどん出てきます。
駅前のラゾーナ川崎では買い物や食事もするし、映画も観ます。
駅から市役所通りを歩いた先にある富士見公園ではテニスをするし、チェーンの居酒屋くらいならお酒を飲んだこともあります。
あたり前だけど、親しんでいる文化、ライフスタイルの違いはあっても、街はみんなと共有しているのです。
たくさんの知っている地名が登場し、地理的には確かに身近な内容なのに、まったく違う世界を覗き見している感覚。川崎を舞台にした、ギャング漫画でも読んでいるかのような錯覚さえ覚えます。
だけど、本書に描かれている世界は、確かにすぐそこに存在しています。
本書の帯文「ここは、地獄か?」は強烈なうたい文句です。
正直にいうと、書店で見たときに、思わずクスリと笑ってしまいました。自分の持っていた川崎のイメージと地獄という言葉のギャップのせいだと思います。
川崎の一部に治安の悪い地域があることは知識として知ってはいたけれど、だとしても「ここは、地獄か?」は、いくらなんでも言い過ぎじゃないかと。
登場人物の一人一人の物語に触れて、地獄とまで言わしめる理由が少し分かったような気がします。
地獄から天国へ行ったもの、抜け出そうにも抜け出せないもの、好んでそこにいるもの…… 地獄の引力に対峙する人間たちの本質は、どこの世界の人間とも変わらないのではないでしょうか。
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