出版禁止/長江俊和 謎が多けりゃいいってもんじゃない

読書感想
出版禁止/長江俊和 感想

書店で平積みになっていた長江俊和氏の出版禁止を読みました。
帯文は以下のとおり。

カルト的人気を誇った伝説の番組「放送禁止」。
そのクリエーターが放った異色の本書は大反響を呼び、2年半以上経った今も囁かれる。
「あの時は凄かった」と。
謎が謎を呼ぶ興奮、未体験の面白さ、絶句する結末。
品質保証100%のエンターテインメント!!

近頃は、読みやすくてエンターテイメント性のある小説を選ぶようにしていることもあって、ちょうど良さそうだと思い購入した次第。

あらすじ

著者本人(長江俊和)が序章終章(あとがき)に登場するスタイルで、本編として「カミュの刺客」と題するルポルタージュを挟む、という体裁をとっています。

ルポルタージュの作者は、若橋呉成(わかはしくれなり)というフリーライター。
このルポルタージュは過去に雑誌での掲載が見送られ、日の目を見ることはありませんでしたが、偶然ルポルタージュを入手した長江は、すっかり魅了されます。
そして、四年以上の歳月を費やしてどうにか出版にこぎつけた、ということが序章で述べられます。

若橋がこのルポルタージュで追いかけた事件は、「熊切敏(くまきりさとし)心中事件」。
有名なドキュメンタリー作家の熊切が、女優の妻がいるのにも関わらず起こした不倫相手との心中事件。
この事件で熊切自身は命を落とすが、不倫相手の愛人は担ぎ込まれた病院で息を吹き返します。
この愛人というのが、新藤七緒(しんどうななお)。熊切の秘書でもありました。

若橋は、事件から既に7年が経っており、これまで一切取材にも応じず消息不明だった七緒とのアポイントメントに漕ぎつけます。七緒の心境の変化もあり、取材の約束も取り付けることに成功します。

ルポルタージュは、当然、七緒へのインタビューを中心に進んでいきます。

ところが、取材を重ねるうちに、若橋と七緒との関係性が徐々に変化していきます。

感想(ネタバレ)

若橋は、この心中事件に異様なほどの執着で取材に取り組みます。
それは、もともと若橋が、熊切の作るドキュメンタリー作品のファンだったから、という理由もあるでしょう。
心中事件のことを、もしかしたら七緒と、七緒の背後にいるだれかによる殺人事件ではないかと疑うこともいいと思います。

ただ、若橋がどうして心中ではなく殺人説のほうに傾くのかの説明が少ないので、無理やり他殺のほうに話を持っていきたいだけなんじゃないか、という強引さがずっと気になりつつの読書でした。
結果的に、心中事件は(おそらく)七緒による犯行という結果だということになるわけですが、ルポルタージュ全編にわたり、その部分が消化不良のまま。
事件のためのストーリー、トリックのための設定、という、納得感がないまま「謎」ばかりを押し付けられているような感覚が拭えませんでした。

あげく、帯文にもある通り「絶句する結末」が終盤に訪れるわけですが、絶句にも程があるというもの。
全ては書きませんが、ネットで解説ブログなどを参照したところ、しんどうななお、の語順を入れ替えると、どうなしおんな。つまり、胴無し女

心中事件の取材の末に若橋と結ばれることになった七緒が、何ゆえに胴無し女なのか。

その詳細は本書に譲りたいと思います。

語順の並び変えの仕掛けに加え、他にもいわゆる縦読みによる謎解明の示唆など、ストーリーとは直接関係ないギミックが散りばめられているようですが、「こういうの面白いでしょ?」と言わんばかりの仕掛けに喜ぶのは、スレたおじさん読者には無理というものです。

また、最後まで読んでも、結局スッキリと謎の部分がきちんと説明されていないのが困りもの。あまりに説明過多なのももちろんいけませんし、再読、精読すれば意味が分かるのかもしれませんが、少なくとも一般的なミステリー小説として楽しめるところまでは落とし込んで欲しいと感じました。

若橋の最後の遺書、わざわざ自分の名前を「わかはしくれなり」と平仮名で記述する違和感よりも、われはしかくなり→我は刺客なり、を悟って欲しいという、最後までトリック先行の考え方。

帯文の品質保証100%のエンターテインメント!!
ちょっと毒を吐かせてもらえば、新潮社の品質保証レベルをやや疑ってしまうし、そもそも品質保証100%ってどういう意味なんでしょう(笑)

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