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ふたり、いもうと/赤川次郎 伊集院光とらじおとにゲスト出演

読書感想
ふたり、いもうと/赤川次郎 感想

いつも聞いているTBSラジオ「伊集院光とらじおと」、2019年11月13日(水)のゲストに赤川次郎さんが出演。新刊「いもうと」の宣伝を兼ねた出演のようでしたが、この「いもうと」は30年前の1989年に出版された「ふたり」の続編。

赤川次郎といえば、中学生から高校生くらいのころによく読みました。
ふたり」については読んだ記憶がなく、アシスタントの安田美香さんが大絶賛していたこともあり、久しぶりに読んでみようと思い立った次第です。

「ふたり」のあらすじ、感想

主人公である北尾実加が中学2年の時、高校2年の姉・千津子が交通事故で亡くなってしまうところから物語は始まります。

ところが、亡くなったはずの姉の声が実加だけには聞こえるようになります。
なにげない会話はもちろん、悩んだときにはアドバイスを貰ったりして、実加は姉とともに暮らしていきます。

友だちとの関係、親との関係、学校での出来事。
ありふれた日常、青春の物語が展開されるわけですが、声だけの姉、という存在がそれら物語に良いアクセントを加えてくれます。
それとともに、頼りなかった実加が徐々に成長していくことで姉の存在感が薄くなっていくという構造が、せつなさを演出しています。

30年前の本ということで、随所に時の隔たりが感じられる部分もありますが、それは最初から分かっていることなので興ざめするようなことはありませんでした。

一番時代を感じたのは、父親の浮気が発覚したあとの家庭の様子。
母や実加はもちろんそれなりにショックは受けるのですが、なんだかんだで収まってしまう感じというのでしょうか。許したわけでもないけど、離婚に向けて話し合うでもない。
今の時代の話だったら、もっと父親が悪者に描かれそうだし、夫婦間の問題としても、より明確に責任を追求される感じになるような気がします。

終盤にはついに姉の声が聞こえなくなってしまうという、とっても収まりのよいオチが用意されており、ストーリー的にも実加の成長が描かれ、ほろ苦くも温かい読み心地となっています。

「いもうと」のあらすじ、感想

「ふたり」の主人公・実加の母の治子は、姉の事故と夫の不倫などが重なったことが原因で心を病んでしまい、長い入院生活に。父の雄一は単身赴任先の北海道で相変わらずの不倫生活。それどころか、愛人との間に子供まで作ってしまいます。
雄一が無神経にもそのことを治子に伝えたことで病状が悪化、なんと治子が命を落としてしまうという事態に。単身赴任先に逃げるように戻る雄一。そして、一人残される実加。

このように、「ふたり」の状況設定を引き継ぎつつも、なんともダークすぎる物語の序盤。

それからまた十年がたち、実加も社会人となるが、ある日、父の不倫相手の祐子から雄一が重い病気で入院していることを告げられます。

そんなことがありながら、仕事では大きなを任務を与えられて忙しくなったり、雄一が祐子と結婚することになったり、その結婚式をなぜか実加が手伝ったりと、出来事が次から次へと起こります。

よく言えば飽きさせない、悪く言えばお腹いっぱい胸焼け状態のストーリー展開。あげくの果てには殺人事件まで起きる始末。残念ながら「ふたり」にあった、せつなくもどこか前向きなファンタジーな世界観は微塵も感じられません。

「ふたり」から30年、なんのために続編である「いもうと」を執筆したのかと問わずにはいられません。そりゃもちろん、続編をうたうことで、「ふたり」も「いもうと」もそれなりに販売が促進される効果はあるでしょうけれど……

すっかり悪口を書いてしまいましたが、「ふたり」と「いもうと」は続編の関係でありながら別々の作品であることは変わりなく、「いもうと」の出来によって「ふたり」の評価まで落とすことはないということは言っておきたいと思います。

それにしても、死んでしまった「姉」の存在が、この2つの物語にとって如何に大きな存在だったか。姉も、姉の声も聞こえない世界を描いた「いもうと」という物語の破綻が、それを証明しているように感じられたのでした。

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