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破局/遠野遥 ヤバい作家の登場を目の当たりにしているのかもしれない

読書感想
破局 感想

第163回芥川賞を受賞した遠野遥の破局を読みました。

著者のルックス、立ち振る舞いなども含めて話題作といっていいでしょう。7月の終わりには三万部を超えたそうです。

遠野遥とは

遠野 遥(とおの はるか、1991年[1]8月22日 – )は、日本の小説家。男性。神奈川県藤沢市出身、東京都在住[2]。

同市立駒寄小学校[2]、同市立大庭中学校を卒業[3]。慶應義塾大学法学部卒業[4][5]。

小説は大学進学後に書き始めた。国内外の名作を片っ端から読み、「一番しっくりきた」と感じた夏目漱石の文体を手本としてジャンルを問わずに執筆を重ね、新人賞に応募し続けたという[2][6]。作風としては平易な文章を意識しており、修飾語の使用を極力抑えている。これは遠野自身が簡潔な文体を好むことや、読み手が想像力を働かせる余地を限定したくないためだと述べている[6]。

2019年に「改良」で第56回文藝賞を受賞しデビュー[1]。2020年に「破局」で第163回芥川龍之介賞受賞[5]。平成生まれとしては初の受賞者となった[1]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E9%87%8E%E9%81%A5

芥川賞受賞会見のノーカット映像はこちら。淡々とした受け答え、シュッとした風貌が話題に。

芥川賞に遠野遥さん「破局」 会見ノーカット(20/07/15)

ツイッターでも積極的に宣伝活動など行っていて、イマドキです。
https://twitter.com/tonoharuka

あらすじ

主人公の陽介は、公務員として就職を志望している大学四年生。

将来的に政治家を志しているほど野心的な麻衣子という彼女がいるが、友人のお笑いライブで偶然に灯(あかり)と出会う。

新入生で右も左も分からない状態の灯。麻衣子と比べるとずいぶん素朴なタイプである灯と、陽介は、なんとはなしの流れで付き合うことに。

公務員試験に向けて勉強したり、ラグビー部の後輩たちを指導しながら、灯との逢瀬を重ねる日々。

一見充実したキャンパスライフを描いた青春物語のようであるが、就職を前にした期待感や、ラグビー部の後輩への熱い気持ち、灯をいつくしむような想い。そういった、卒業を控えた大学生なら普通にありそうな感情が、陽介の脳内には見当たらない。

破局/遠野遥

感想

決してつまらなかったわけではなく、面白い小説だとは思いました。

ただ、主人公のキャラクターが徐々に明らかになるにつれ、最初に頭に浮かんだのは「またこのタイプか」という言葉です。

どこか感情が欠如し、他人の言葉を額面通りに受け取って行動するような、変わりもの。

最近読んだスクラップアンドビルド(羽田圭介)、好きな作家である村田沙耶香さんや今村夏子さんの作品に登場する人物たちも、似たような特徴があります。

主人公である陽介の特徴として、外面的には順調な大学生活を送っていて、勉強にも真面目、彼女にも優しくて後輩の指導にも熱心。しかしその行動に至る考え方が、まるで取扱説明書に従っているかのようで感情が伴わない。

その内と外のギャップに、確かに独自性がないわけではありません。感情ではなく、あるべき規則に沿って動く陽介に共感する、という人もいるでしょう。しかし好みの問題かもしれませんが、今一つ共感できなかったし、何より陽介という人物にどうしても好感がもてませんでした。

特に嫌だなと思ったのが、ラグビー部の後輩へ指導する場面。

女たちへは「優しくすべし」という規則に従ってあらゆる行動を起こすのに対し、ラグビー部の後輩に対しては「試合に勝たせるべし」あるいは「技術を習得させるべし」という規則で動いているため、安易にこういう言葉は使いたくありませんが、ほとんどサイコパス的に猛烈指導をする先輩と化しているのです。

イマドキは褒める指導もあるとか、体育会系はこんなもんだとか言ったところで意味はないし、どんなに読み心地が悪かろうと、このシーンによって陽介という人物の歪みを描きだし作品に厚みを加えているのだと理解もできるのですが、だけど、遠野さんはこんな風に言うのです。

「全然、自分ではそんな変なキャラクターにしようとか思ってなくて、逆に、もう人によってはけっこう、気持ち悪いとか、共感できないとか、怖いとかおっしゃるんですけど、そんなふうに書いたんじゃないのになって思いますね。もう少し親しみを持っていただけたらと思います」

第163回芥川賞受賞者記者会見より

いやいや、親しみを持つなんて到底無理! 倒れている後輩を一顧だにせず、容赦なく練習メニューを課す陽介にどう親しみを持てと。

記者会見ですから多少のリップサービスもあるのかもしれませんが、言葉の通りに受け取るとすれば、陽介という特異なキャラクター設定を創りだしたというより、自身の感覚に重ねて描いたものだということ。

だとすれば、作品どうこうより、もはや遠野遥という作家の登場自体がもっとも注目すべき事柄なのだとさえ思えてくるのです。

イケメンだったりスーツをシュッと着こなしているとか、そういうことに注目されがちな遠野さんですが、この(言葉の本来の意味で)ヤバい感覚をもった作家がこれからどのような活動をしていくのか(あるいは、やらかしてくれるのか)大いに注目していきたいと思います。

破局/遠野遥

コメント

  1. […] 破局/遠野遥 ヤバい作家の登場を目の当たりにしているのかもしれない第163回芥川賞を受賞した遠野遥の破局を読みました。fukasawa-shoten.com2020.08.29 […]

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