とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました。
伊坂幸太郎によるこの力強い帯文に背中を押され手に取りました。第二回新潮ミステリー大賞を受賞。
あらすじ、内容について
伊坂幸太郎「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました。ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなあ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています」
動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから」。
Amazon 商品の説明より
「レプリカたちの夜」の感想、所感
ひとことでいえば、不条理系とでもいうのでしょうか。
第二回新潮ミステリー大賞受賞、伊坂幸太郎の激賞推薦文から想像していた作風とは大幅に違う内容でした。
工場で本物らしきシロクマを見かけた時点で、これはファンタジーなのか、あるいはミステリーなのかと読むほうは構えるのだけど、結果的にそのどちらでもありません。次から次へと不可思議なことは起きつつも、まったく解決の兆しがないので、頭は混乱するばかり。
主人公の往本(おうもと)、同僚の粒山、資材部のうみみずという女性が主な登場人物なのだけど、途中からは、どうもそれぞれのドッペルゲンガーみたいなものも登場してきて、会話が成り立たなかったり、矛盾が生じたり。
時おり、このような不条理ものと遭遇しますが、いまいちどのように楽しめばよいのか分かりません。まったく苦手なジャンルです。最後まで読んだのですが、それはまさに読むという筋肉を鍛えんがための読書……
この世界観を突き通すパワーのようなものを感じることはできますが、それに付いていくために差し伸べられるガイドは少なく、消えそうになった登山道から一歩それるとたちまち迷いの森に足を踏み入れてしまい決して頂上にはたどり着けない。多くの人がそんな難しい冒険のような読書を強いられるのではないでしょうか。
コメント