おっぱいが大きいことだけを自分のアイデンティティとしているフリーターの巡谷(めぐりや)と、いつも自分の体臭を気にしながら早く処女を捨てることばかりに執着しているニートの日田(にった)という、なんとも変わった二人の女子の共同生活を描いている作品です。
歳は二十三歳、同じ地方出身で同級生。
少しは楽しそうな日常が描かれてもよさそうなものですが、華やかな様子はまったくありません。
明るくなく、それほどかわいくもなく、よってモテない、鬱屈しまくった二人のひどい青春物語となっています。
たとえば、巡谷にはセックスフレンドの横ちんがいるけど、もちろんただの浮気相手。
巡谷はオッパイを武器に、そんな相手とも関係を続けられるよう執着します。
しかし結局フラれてしまいます。
これだけでも悲しい話ですが、そこに目をつけた日田は、処女を捧げる相手として横ちんになんとかしてもらえないかと、巡谷にお願いする始末。
悲しすぎて目も当てられません……
それでも「せめてチンコを見てみたい。」という日田のささやかな(?)願望だけは聞き入れられ、「これで夢の中でも、チンコのところがぼかされないはず。」と意外と満足気。
こういうよく分からないエピソードも本谷有希子さんらしい描写で、見どころと言っていいのではないでしょうか。
冷静に考えてみると、とんでもなくヒドいエピソードなんですが(汗)
ちなみに、そんな日田は、近所の清掃工場の煙突から排出される煙に含まれている(と信じ込んでいる)ダイオキシンに、日々怯えながら暮らしています。
どのようにダイオキシンから避けているか、そして、巡谷にダイオキシンの有害さを力説するくだりもどうかしていて痛すぎます。
にもかかわらず、物語のクライマックスではあんなにおそれていたダイオキシンを直接嗅ぎに行くべく、清掃工場に突入し、巡谷と二人で煙突のテッペンを目指すのです……
この、性欲と鬱屈と友情のパワーが一気に炸裂するエンディングは迫力満点。
いろいろ困った問題はあるけれど、とにかく前へ進むしかないよね、という未来に対する明るい予感みたいなものを感じさせてくれます。
巡谷と日田に幸あれ、と願わずにはいられないのです。
この変な女子二人の、変な青春生活。
まずは怖いもの見たさでもいいので覗いてみてはいかがでしょうか(笑)
本谷有希子さん紹介
本谷 有希子(もとや ゆきこ、1979年7月14日 – )は、日本の劇作家、小説家。演出家、女優、声優なども兼ねる。石川県出身。「劇団、本谷有希子」主宰。夫は詩人・作詞家の御徒町凧。
受賞歴
2007年 – 第10回鶴屋南北戯曲賞(『遭難、』)
2009年 – 第53回岸田國士戯曲賞(『幸せ最高ありがとうマジで!』)
2011年 – 第33回野間文芸新人賞(『ぬるい毒』)
2013年 – 第7回大江健三郎賞(『嵐のピクニック』)
2014年 – 第27回三島由紀夫賞(『自分を好きになる方法』)
2016年 – 第154回芥川龍之介賞(『異類婚姻譚』)
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