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人新世の「資本論」/斎藤幸平 変化を起こせる気がしない絶望感

読書感想
人新世の「資本論」/斎藤幸平 感想

2021年なにかと話題になった本書。新書大賞も受賞。購入したときは「10万部突破」と帯に書かれていたけれど、2021年末には40万部を超える販売部数となっています。

あらすじ、内容について

Amazonよりあらすじを引用。

人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。
気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。
それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。
いや、危機の解決策はある。
ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。
世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!

人新世の「資本論」

この本が売れるにつれて著者の露出も増えていき、その分かりやすい語り口がますます読者を増やしていく、という好循環が生まれたようにも思えます。

人新世の「資本論」の感想、所感

読み終えたとき、著者が読者に期待するような感情になれたかどうかで言えば、はっきりと「なった」と言うことはできませんでした。未来に対する使命感よりも、絶望感にちかい、気の遠くなるような感覚に陥ってしまいました。

もちろん、できることなら負荷のかかるような暮らしはしたくないと思ってはいますが。

  • 車の所有を自立と結びつけるような消費文化と手を切る
  • 生活の規模を1970年代後半レベルに落とす
  • ニューヨークで3日間過ごすためだけに飛行機には乗れなくなる
  • 空輸したボジョレー・ヌーボーを解禁の日に飲むこともできない

著者のいう、脱成長後の世界の一例。小さなことのようで、とてつもなく難しいことのようでもあります。

人並の生活、ちょっとした贅沢をするために必死で働くのにどこかでうんざりしながらも、自分のなかにさえ収入で人を見てしまう部分がゼロとはいえない。

本書を読むと、華やかなる企業、そこで働く高収入な人たちに対して憎しみにさえ似た感情が起きるけれど、それはただの妬みと裏腹なんじゃないかという葛藤もある。

そんな価値観にどっぷりつかってしまっているし、それが当たり前の社会になっています。

どの企業もやたらに掲げているSDGs。しかしそれが経済活動のPRに使われては意味はないのだという指摘には頷けるし、そうなると、もはやいったい誰が本気でSDGsを目指しているのかさえ分かりません。

本気で目指すなら、資本主義ではだめだと著者は言います。

政治家がそれを変える力を持つことは仕組み上不可能なのだから、民主主義そのものを見直すしかない、とも言います。

脱成長後の世界を受け入れることができるかどうかということよりも、この大きな変化を自分たちで起こせる道筋がさっぱり想像できない、ということが絶望感の理由なのでしょう。なんだかとても情けないけれど。

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