YouTube【宇野常寛の〈木曜解放区 〉2019.2.14】で井本光俊さんという方が紹介していた、藤岡換太郎さんの「川はどうしてできるのか」を読みました。
この本は、「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」に続く第三弾として刊行されました。
著者の藤岡さんによれば、川の研究などは厄介なだけで、目覚しい成果をあげることは至難の業。
河川を専門にする研究者も少ないとのこと。
その理由は川の成り立ちを知ることが研究者にとってさえ非常に難しいから。
川に流れがあることで証拠が残らず、そのことが研究者の壁になってしまうのだそうです。
そのような状況のなか、「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」を連続して出された藤岡さんが、川の面白さを伝えるべく書いてくださったのが本書「川はどうしてできるのか」というわけです。
本書の特徴は、研究とは無縁なシロウトでも分かりやすい文章と興味深いエピソードや情報が盛りだくさんなこと。
第一章では、著者がピックアップした川の謎が紹介されています。
元々まっすぐだったのに折れ曲がってしまった柿沢川、平地より高いところを流れる天井川、なぜ富士山には川がないのか、沖縄にある塩水の川。
13項目もあるそれぞれの謎を、種明かしとともに分かりやすく解説してくれます。
とくに、川は海に注いで終わりなのではなく、海底までその流れが続いていることなど、知らなかったことがたくさんありました。
第二章では、多摩川の源流から河口までを、さまざまな専門的な知見を交えて、下りながら解説していきます。
お勉強という感じではなく、ところどころに写真や風景の描写もあり、ちょっとした紀行文のようになっています。
特に、二子玉川や、調布取水堰あたりからの風景は東急の電車からの車窓でなじみもあり、楽しく読めました。
この調布取水堰は防潮の役割もしていて、一般的に調布取水堰が多摩川の中流と下流の区切りということになっているのだそうです。
第三章では、著者が語る壮大な仮説が三つ紹介されます。
川の研究というものが難しいゆえ、著者自身これらの仮説は証明することも否定することも困難だろうと語っています。
できるだけネタバレはしたくありませんが一つだけ。
特に、天竜川と信濃川にまつわる仮説は大胆で、はるか昔(1500万年前)には天竜川と信濃川がつながっていたのではないか!?というもの。
日本海と太平洋に注ぐ、流れる方向が正反対の二つの川がつながっていた……こんなびっくり仰天の仮説でさえ、著者の解説にはなんだかとても説得力があるのです。
以前に興味があって訪れた善知鳥(うとう)峠の写真です。
日本海に流れるか、太平洋に流れるかの分水嶺、この仮説でも、とっても重要なポイントとなっています。
どのように重要なのか、ぜひ本書を読んでみてください。
知らなかった川の話から、大胆な仮説まで、本当に楽しく読むことができました。おすすめです!
コメント
興味深い記事でした。成り立ちに思いを馳せるのもロマンがあり楽しいですね。
一句「迷いなく流る分水嶺のみず」
こちらの記事にもご興味をもっていただきありがとうございます。
全くおっしゃる通りで、自然の成り立ちにはロマンたっぷりです。
これを機会に「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」のほうも読んでみようか思案中です。
句までありがとうございます。
大きな分かれ道の行く先など知らず、水はただただ流れるだけですものね。