映画「罪の声」が2020年10月30日より劇場公開されています。
原作小説がなかなか面白い一冊でしたので、映画も見てきました。
感想(ネタバレあり)
あらすじなどは小説の感想に譲ります。
日本の犯罪史に残るグリコ森永事件を題材とした原作。その壮大なストーリーゆえ、もしかしたらガッカリするかも、ということも覚悟していたのですが、映画を観た率直な印象としては、思っていたより原作をしっかり再現できているし、映像化による無理やり感、チャチっぽくなってしまっているところもほとんど感じませんでした。
そんななかでもキャラクターに馴染むのに時間を要したのは、星野源と小栗旬という二人の主人公。興行上の理由であったり、映画の宣伝のためでもあるのでしょうけれど、テレビなどでタレントとしてのふるまいを露出し過ぎることって、映画を観るうえで弊害になると思うのですがどうなんでしょう。
事件に声を使われた、曽根以外の二人の姉弟の描写がショッキングすぎる点も気になりました。原作でも悲惨な人生ではあるのですが、映像として見せられるとことさら悲惨さが増幅されます。好みはあるでしょうけれど観るのが辛いシーンです。
特に弟の聡一郎の部屋に吊るされたロープ。絞首刑かなにかで使われそうな、輪を作ったぶっといロープが普通の部屋にぶら下がっているのってややリアリティに欠けているような……
ただ聡一郎のキャラクターは異様な存在感を放っており、これはもう役者である宇野祥平さんの力ではないでしょうか。曽根の心を揺さぶる重要な役を負っていました。
事件によって、その後の人生をめちゃくちゃにされた姉弟。
そして、この二人の末路を知った曽根の罪悪感。
物語の重要なポイントですが、原作と比べると、曽根を含めた声を使われた子供たちの人生につよく比重をおいた演出だったように感じました。
原作では当時の社会情勢などの描写にもかなりページを割かれており、物語に厚みが加わっています。もしかすると、映画化にあたってストーリーの分かりやすさや、感情移入のしやすさなどを考慮した結果なのかもしれません。
それでもその時代のエッセンスは随所に取り入れられており、特に曽根の伯父を演じる宇崎竜童さんもどこか影を感じさせる雰囲気でよかったです。
それにしても、新聞記者、取材、警察、カーチェイスなどの題材やシーンと「いかにも」な音楽が重なると、ただでかい音でテレビのドラマを見ているような気分になってしまいました。
だからだめという訳ではありませんが、日本のミステリーものを映画で観たときのあるあるではないでしょうか?
それでも、日本で最も有名な未解決事件の一つであるグリコ森永事件の謎解きを描く意欲作。
ぜひご覧になってはいかがでしょうか。
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