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想像ラジオ/いとうせいこう 東日本大震災直後、想像という電波で流れるラジオとは

想像ラジオ/いとうせいこう 感想 読書感想
想像ラジオ/いとうせいこう 感想

2013年に河出書房より刊行、2015年に文庫化された、いとうせいこうさんの想像ラジオを読みました。
受賞は逃しましたが、2013年上半期、第149回芥川賞の候補にもなった作品です。

 

この作品のテーマは2011年に起きた東日本大震災。

「あなたの想像力の中」だけで聞こえるというラジオ番組と、DJのアークを中心に、いくつかのエピソードが展開される構成です。

このファンタジー的な設定もそうですが、テーマがテーマだけに、生と死の残酷さから切っても切り離せない作品となっています。

少しネタバレをしますが、読み進めるうちに、DJアークは震災のせいでもうこの世にはいないのだな、ということが分かってきます。
それと同時に、DJアークが発信している「想像ラジオ」が聞こえるのもやはり、この世にはいない人たち。

そういうことが、(この世にはいない)リスナーからのお便りやエピソード、そしてDJアーク自身の記憶などから、徐々に判明していきます。

そもそもDJアークが想像ラジオを始めたのは津波によって離れ離れになってしまった家族を探すため。
だけど、家族は全然みつからず、ラジオで呼びかけても全然反応が返ってきません。

でも逆にいうと、DJアークのラジオが聞こえないということは「生きている」ということ。

それはとても嬉しいことではあるのだけど、DJアークはどうしてもこうも思ってしまうのです。

僕はその息子の声が聞きたい。
同時に奥さんの声も。

この願いがかなうのかどうかは、ぜひ本書をお楽しみください。

正直にいうと、この本は、きちんと理解しながら読み進めるのがとても難しい一冊でした。
軸となるストーリー性みたいなものは薄く、且つ、個々のエピソードのつながりもファンタジー的な要素が色濃い。

悲しみをダイレクトに描くのではなく、DJアークの軽妙なトークで綴られていくのも、スッと入って来ない感じがしました。
震災すぐの時期に書かれた作品を、8年が経った現在読むのは、どうしても受け止めが違うのかもしれませんが。

芥川賞の選考での島田雅彦氏のコメントを引用します。

「じっくり読めば読むほどに、この作品は微笑を誘う小ネタ満載で、実にサービス精神の行き届いたエンターティメントに仕上がっていることがわかる。」「だが、逆にこのウエルメードぶりにあざとさを感じてしまうのも事実で、たとえていえば、司会があまりに芸達者なので、ゆっくり死を思うことができない葬儀に列席しているような感覚である。」

最後に、物語のなかでDJアークが節目節目に流す音楽をプレイリストにしてみました。

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