ハレルヤ/保坂和志を読みました。
保坂さんの小説の感想を書くのはちょっと難しくて、代わりに、YouTubeにあがっている川端康成文学賞受賞スピーチの書き起こしをしてみました。
言っていることもそうだし、この動画からにじみ出る人柄が、そのまま文章になっているような小説でした。これは、ハレルヤに限ったことではありませんが。
ハレルヤに収録されている「こことよそ」が第44回 川端康成文学賞作品です。
選考委員の 方は なんかすごく一生懸命考えて読んでくださったんですけど
本人はそんな考えてないんすよ(笑) すんません でね あのー
考えないで書く! ってのを 最近あのー えー スタイルにしようとしてまして
で あのー で まず えー 小説は二の次の生活をしたい
で えー いや実際そうで
あのー ずーっと猫の世話に明け暮れてましたんで あのー
小説のことを考えるより 猫のことを考えて でー
これからも そのー まあ いま猫はいるんですけど
で あの今ちょうどネコメンタリーって番組があって それのあのー 収録もしてて
あのー 顔写って困る人は あそれ大丈夫なんすね んで あのー
で それあの Eテレっていうので作家と猫の暮らしってのやってて
であの今日いらしてないんだけど 角田光代さんとかがこないだ出てて
でも角田さんより僕のが全っ然猫かわいがってて
それはもう誰もが知ってるんですけど
で 何故か今回この受賞作の「こことよそ」には猫のこと出てこないんですよね
で あのー 四月に あのー 編集長のヤノさんから
「保坂さん 川端賞、川端文学賞決まったの……」
あ! 「ハレルヤ」か! こないだ書いた猫の死んだ話があって、
でー あのー さすが「ハレルヤ」だなーって いや去年の「こことよそ」なんですつってー
あそうー 残念ーみたいなー 「あ すいません」
あのー(笑)
いや だから ま とにかく「こことよそ」にしても その次の「ハレルヤ」にしても
とにかく 小説は二の次
で これからもしばらくは あのー そういう 猫を最優先とか
で それが無くなったときに 小説が一番にならないように
次々いろいろ考えてかないといけないんですけども それで えー
じゃあ 小説ってどういうものかっていうと 僕にとってはあの なんなのかなって
こないだ こう しゃべってて 気が付いたんですけど あのー
お坊さんにとってのお経のようなもので
お経ってのは毎日毎日読むけれども あのー
お経を読むことによって何か作品が生まれるわけじゃなくて
で 僕の理想としては あのー まお金さえあれば 別に なんでも書くんですね
毎日とにかく書くという日課だけはあったほうがいいんですけど でー
でもそれが別に作品になんなくても構わないじゃないかと で
だから お坊さんがお経を読むように 作品は書く
でもお坊さんにとっても お経を読むってことはお坊さんにとってのメインではなくて
お坊さん もっと別のメインのことはちゃんと
お経程度のことでは済まないような生活があるはずなんで で
僕もそういうことなんで あのー 小説を 小説ってのはもうあの こう
完成形っていうか 完成度はまずどうでもいいじゃないかと で あのー
いや そう考えると 小説の書き方って全然変わってきて であのこう
なにかこう 一つのことがあると バーンってこう いろんな連想が広がるでしょ で
いろんな連想が広がるのを 文学では脱線ていうんですけども あの
心理学の知り合いに言わせるとそれは連想なんですよ で だから
あの 本来人が生きてて しゃべって ものを考えてっていうのは あのー その
文学で脱線と言われる連想の塊なんですよ で
人はしゃべるのにかならずドンドンドンドンドンドンドンドン脱線脱線してって
でそれは連想連想連想してって で あのー
頭ん中で考えるときも色んなことドンドンドンドン次々次々 こう広がっていくんだけども
あのー 文章書く時だけは そういうことするとマズいんじゃないか
小学校んときから先生に怒られてたなみたいなことを 必ずみんな考えて あの
文章だけなんかこう 学校の先生と生徒みたいな関係になっちゃうんで
そういうことどうでもいいじゃないかと
あのほんとに 普段しゃべるように考えるように書けばいいんだっていう
ふうに考えて だからあの 僕の文章ってのは 脈絡はないが飛躍はある
それで 脈絡はないが矛盾はある それはそれでいいの
一貫性はないが矛盾はある そういうことで あのー だから
一貫性があるとか 話が収束する? 収束するよりはずっと拡散拡散拡散しつづけるように
どうやって書けばいいのかっつって でこれが あの
元気がない時にはあんまり拡散できないんですよね
で 調子がいいとドンドンドンドン話ってのは拡散できて で それはあの
やっぱりそれは 子供んときそうだったんで
だから文章書くのあんま好きじゃなかったんですけど
国語とか全然できなかったから で あの
落ち着きがない 集中しない ルールを守らない 約束事を守んない 大人の言うことを聞かない
で それがあの 僕の生き方で ずーっとこう もう今デビューしてさすがに28年たって
去年還暦にもなって で そういうことなってくと
ちゃんと小説家として人生を実践しなきゃいけない だから あの
小説の中で何かをするんじゃなくて 小説家として何かをしよう で
ま どっちか良くわかんないんだけど だからその矛盾が大事なんで で あのー
えっと 今 今どこかにいる子供たちでも それで あの
僕が子供んときに僕を見ていた人たちも
まさかこんな人が小説家になるとは思っていなかった で
それはやっぱり でも あの 小学校6年の10月に
川端先生のところに 先生ノーベル文学賞おめでとうございます って言ったのが
やっぱりきっかけだったかもしれないんで
あの日に感謝したいと思います
どうもありがとうございます
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