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さよならテレビ テレビカメラがテレビ局の裏側に潜入、密着

映画
さよならテレビ 感想

東海テレビの開局60周年記念番組として2018年9月に放映された「さよならテレビ」。
この番組の映画版「さよならテレビ」を観てきました。

監督の圡方宏史(ひじかたこうじ)さんによると、もともと映画を制作することを視野に入れており、テレビ版を拡張して映画化したというよりは、映画版を短く編集して放送したのがテレビ版というイメージだそうです。

各メディアで紹介されています

知ったきっかけは、いつも聞いているラジオ「伊集院光とらじおと」の企画での紹介でした。その後、番組では監督である圡方宏史さんをゲストのコーナーに呼ぶほど、伊集院さんはじめ、番組のスタッフ陣にも反響が大きかったよう。

観る人の立場によって随分感想が違うんじゃないか、という伊集院さんは、とあるシーンで大号泣。だけど、一緒にいった後輩の反応は「泣くとこありました!?」。

こちらのAbemaの番組にも監督がゲストに呼ばれています。題材が題材だけに、議論が熱く盛り上がりますね。

セシウムさん騒動について

セシウムさん騒動(セシウムさんそうどう)は、2011年(平成23年)8月4日に東海テレビのローカルワイド番組「ぴーかんテレビ」(中京広域圏に平日9:55 – 11:30に生放送)において発生した放送事故。ローカル局での出来事ながら、日本全国における放送事業者の倫理観を問われる事態に発展した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%95%E3%82%93%E9%A8%92%E5%8B%95

必須ではありませんが、この映画を観るにあたって知っておいたほうがよい事件といえます。

岩手県産のひとめぼれプレゼントの当選者を「怪しいお米 セシウムさん」「汚染されたお米 セシウムさん」などと、ありえないテロップ表示をしてしまった事件。

当時、この番組のMCをしていたのが福島アナウンサーぴーかんテレビは打ち切りに追い込まれました。

さよならテレビでも、過去のトラウマを抱えつつも番組づくりに奮闘する、主要な登場人物となっています。

あらすじと感想

ドキュメンタリーの内容としては、テレビ東海の情報番組の制作スタッフを1年7カ月もの間ひたすら追いかけたものとなっています。

スタッフからは「仕事にならないよ」と疑問の声があがり、軋轢も生じますが、観る側としてはまずは単純に、普段みることのできない番組制作の裏側を覗き見ることができる面白さがあります。

ただ、個人的には「さよならテレビ」している側の人間で、正直いってテレビの情報番組というものを面白いと思って見ることはありません。

専門家でもない芸能人やコメンテーターという人たちの内容の薄いコメント。大して興味も持てない芸能のスキャンダルやグルメレポート。しかも、どの局を見ても大した違いはありません。

そして、そのような不満の元凶がまさにここにあるんだと示さんばかりの番組制作の様子が次々と映されていきます。

同時刻に放送されている他社との視聴率比べに一喜一憂するスタッフ、スポンサー企業からお願いされて取材をする「是非ネタ(ヨイショネタ)」、過去のトラウマがあるにせよ、視聴者からのクレームを極度に怖れ、無難なコメントしか言えない番組MC。

番組のクオリティを上げていこうという意気込みより、いかに視聴率を落とさないか、いかにスポンサーを獲得するか、つまりは自分たちの食い扶持のことしか考えてないように見えるわけです。

そういった番組だって、もちろんあって構わないと思いますが、曲がりなりにも総務省からの認可という特権を持っている放送事業者がこれでいいのだろうか、という疑問は感じざるを得ません。

ネットに無数にあるサイトの一つ、あるいはYouTubeの一チャンネルであれば、好きにやってくれていいと思います。でも、テレビに流す番組を作ることができる、数すくない放送局が質よりも利益優先になっている状況はいかがなものでしょうか。

映画は、番組メインキャスターの福島智之アナウンサー、是非ネタを取材しつつも内心ではジャーナリストとしての矜持を持つ澤村慎太郎記者、アイドル好きでテレビ業界に憧れをもち働いてるポンコツ気味な渡邊雅之くん、の三人のようすをメインに描かれていきます。

このうち、澤村記者は契約社員、渡邊くんは派遣社員というのも、テレビ業界の現状をよく映し出しています。社員である福島アナも、働き方改革という名の下に残業を厳しく管理されやりにくそうではありますが、それでもテレビ局の社員といったらけっこう良い給料なのでしょうし……

格差社会を憂うようなコメントを伝える番組もありますが、そのテレビ局の内部でさえやはり格差がハッキリと存在しているのです。

つまらない番組を作り続けながらスポンサーを保ち、格差を生み出してでも自分たちの高給を維持し、縮小し続けるであろうテレビ業界にいながらもギリギリ逃げ切ろうとしている人たちが、捨て台詞のように「さよならテレビ」という言葉を残して去っていく様が脳裏に浮かんでしまうのでした。

ただ、もちろんこのような取材を敢行した撮影チームもまた東海テレビ。
それはまさに問題意識があることの証明ですし、身内だからこそ撮影できた映像もたくさんあるでしょう。

つい不満が多く口をついてしまいましたが、そういった意味でとても意味がある映画となっていますし、登場人物の三人を巡る物語にも、笑いあり、熱い部分もあり、エンターテインメント性も兼ね備えた素敵なドキュメンタリー映画でした。オススメです!

映画『さよならテレビ』公式サイト
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